非認知能力と実行機能の関わり

非認知能力は自分、もしくは他人に関係する心の能力のことです。心の知性(EQ)とも言われています。具体的には、学びに向かう力,自己の感情や行動をコントロールする能力,他の人と協働する力などがあげられます。専門的には非認知能力を社会的情緒的スキル、実行機能を区別して考えられています。近年では、そのうちの実行機能が非認知能力向上に関わっているといわれています。

非認知能力のはじまり


非認知能力の存在は、2000 年にジエームズ・J・ヘックマンが、幼児教育の介入・投資効果として、子供たちの人生に影響を与えるのは、IQ数値で測ることのできる認知能力というよりも非認知能力であるという結果を発表したところから、広く知られるようになりました。2015年、ОECDは調査報告書「社会を発展させる技能/社会的情緒的技能の力(SkillsforSocialProgress/The Power of Social and Emotional Skills)」の中で個人の幸福(well-being)と社会の発展を牽引するのは非認知能力であることを示しました。

非認知能力の位置づけ

日本でも文部科学省は,2020年の教育要綱改革案の中でも育成すべき資質・能力の3つの柱の1つとして非認知能力の力の必要性を加えています。「どのように社会や世界と向き合うか」心のあり様や学ぶ土台として非認知能力を位置づけています。同じく、幼稚園教育要領,保育所保育指針には,「自分の気持ちを調整する」ことや、「友達と折り合いをつける」などの非認知能力に関わる内容が盛りこまれています。

実行機能の教育の重要性

近年の7年間の縦断研究(追跡調査)※1によると、幼児期の実行機能が小学校1年時の学業達成を支え、そこで育まれた学力が小学校6年生までの学業達成にも影響するということもわかっています。また、学力面だけでなく、自己制御や社会的スキルを通じて非認知能力と相互に影響し合う関係にあります。そのため、早期の段階で実行機能能力を向上させるための、教育介入の必要性もより高まっています。

まとめ

就学前の子どもの心の機能をどのように高めていくかが、未来の教育を形作るポイントになります。未就学前の子ども達こそ、目先の学力面ではなく、友達と交流し創造的で幅広い視座・経験をして、実行機能をはじめ非認知能力を高めていきましょう。それが、今後の子ども達の個性や能力の伸びしろとなって大きな花を咲かせることにつながるのです。

※1幼児期の実行機能が児童期の学業達成に及ぼす影響 2023 中道直子 中道圭人 中澤潤


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